「売上は月45万円あるのに、手元に残るのが20万円を切る」 「経費が多いのは分かっているけど、どこを削ればいいのか分からない」
手取りを増やす方法は「売上を増やす」と「出ていく額を減らす」の2つで、後者の方が早く確実に効きます。結論から言うと、軽貨物の支出は燃料・保険・車両維持・通信・有料道路の5つでほぼ決まり、この5つを「月額」と「1kmあたり」で並べると、漏れている場所が見えるということです。この記事では税務の話には踏み込まず、純粋に「毎月出ていく額をどう減らすか」を扱います。
結論:5つの費目を「月額」と「1kmあたり」の2つで見る
| 費目 | 月額の出し方 | 1kmあたりの出し方 | 見直しの余地 |
|---|---|---|---|
| 燃料 | 月の給油額の合計 | 給油額 ÷ 月の走行距離 | 給油場所・運転の仕方・空車回送の削減 |
| 保険(任意・貨物) | 年額 ÷ 12 | 月額 ÷ 走行距離 | 補償内容と等級の確認、重複の解消 |
| 車両維持(整備・タイヤ・車検積立) | 年間見込み ÷ 12 | 同上 | 定期点検の計画化、消耗品の交換時期 |
| 通信 | 月額 | 同上 | プランの見直し、端末の台数 |
| 有料道路 | 月の利用額 | 月額 ÷ 走行距離 | 区間ごとの必要性、割引の利用 |
「月額」で見ると金額の大きい順が分かり、「1kmあたり」で見ると走り方の効率が分かります。両方を出すのが要点です。
手順1:直近3か月の支払を費目別に集める
材料は、給油のレシート(またはカード明細)、保険の証券、整備の領収書、通信の請求、ETCの利用明細です。日報に走行距離を書いていれば、1kmあたりの計算はすぐできます。
一例として、月2,500km走るドライバーの3か月平均が次のようになったとします(説明用の例です)。
| 費目 | 月額(例) | 1kmあたり(例) |
|---|---|---|
| 燃料 | 45,000円 | 18円 |
| 保険 | 15,000円 | 6円 |
| 車両維持 | 12,000円 | 4.8円 |
| 通信 | 8,000円 | 3.2円 |
| 有料道路 | 20,000円 | 8円 |
| 合計 | 100,000円 | 40円 |
この例では、燃料と有料道路で全体の65%を占めています。見直しの優先順位は、金額の大きい費目からです。
手順2:費目ごとに「漏れ」を探す
燃料
- 空車回送(荷物を積まずに走る距離)が月に何km あるか。日報の走行距離と配達の順路から出す。空車回送が2割を超えているなら、案件の組み合わせや拠点の見直しで減らせる余地がある
- 給油場所の単価差。同じ月に複数の店で給油しているなら、レシートで単価を比べる
- アイドリング。夏冬の休憩中の空調は必要だが、荷卸し中のエンジン停止など、削れる場面はある
保険
- 任意保険(対人・対物)と、荷物の賠償に対応する保険の補償範囲が重複していないか
- 使っていない特約が付いていないか。逆に、必要な補償(対物の上限、車両保険の有無)が足りていないなら、削るのではなく見直す
- 保険は「削る費目」ではなく「過不足をなくす費目」です。事故のときに出ない保険は、毎月の保険料そのものが漏れです
車両維持
- 車検・タイヤ交換・オイル交換の時期を年間で計画し、月額で積み立てる。突発の出費として扱うと、その月の手取りが崩れる
- タイヤの空気圧と偏摩耗は燃費と交換時期の両方に効く。日常点検の項目に入れておく
通信
- 業務用と私用の端末・回線が分かれている場合、それぞれの使用量とプランを見る。データ量が毎月余っているなら、下のプランで足りる
- 配達アプリの通信量は思ったより少ないことが多い。実際の使用量で判断する
有料道路
- 区間ごとに「使わないと成り立たないか」を見る。時間指定に間に合わせるために必要な区間と、習慣で使っている区間を分ける
- 割引制度(時間帯割引や事業用の割引)が使えるかを確認する。制度の内容や条件は変わるため、各道路会社の公式情報で確認してください
手順3:見直しの優先順位を決める
見直しは「金額が大きく、手間が小さい」ものからです。
- 有料道路の習慣区間をやめる(今日からできる・効果が大きい)
- 給油場所を単価の安い店に寄せる(今日からできる・効果は中)
- 通信プランを下げる(手続き1回・効果は小〜中)
- 空車回送を減らす案件の組み替え(時間がかかる・効果は大)
- 保険の補償内容を確認する(更新時・効果は「事故時の安心」が中心)
一例として、有料道路の習慣区間を月5,000円、給油の単価差で月2,000円、通信プランで月2,000円削れたとすると、月9,000円、年間で10万円超の手取り増になります。売上で同じ額を増やすには、単価180円の宅配なら年間600個近く多く配る計算です。どちらが早いかは明らかです。
削ってはいけない費目
固定費の見直しで、削ると後で高くつくものがあります。
- 事故時に出る保険:対人・対物・荷物の賠償。ここを削った1回の事故で、数年分の節約が消える
- 定期点検・タイヤ:先延ばしにすると、故障で稼働が止まる日の損失の方が大きい
- 休憩と睡眠のための出費:夏の空調、仮眠の場所。削ると事故のリスクになる
「削る」のは習慣と重複であって、安全と稼働を支える出費ではありません。
よくある失敗
- 売上を増やすことばかり考える:固定費を見ずに案件を増やし、走行距離が増えた分だけ燃料と有料道路も増えて手取りが変わらなかった。
- 保険を削って事故で払う:対物の上限を下げて保険料を節約し、事故で自己負担が発生した。
- 車検・タイヤの出費を「突発」扱いする:積み立てていなかったため、車検の月に手取りがマイナスになった。
- 1kmあたりを出さない:月額だけ見て「燃料が高い」と嘆いていたが、実際は空車回送が多かった。
実務メモ:日報の走行距離が固定費の見直しの土台
5つの費目を「1kmあたり」で見るには、日報に走行距離(出庫・帰庫のメーター値)が残っていることが前提です。走行距離は加算請求の根拠にも、荷主別の粗利にも、固定費の見直しにも使える数字です。日報→月次の集計→固定費の表、と同じ数字がつながっていれば、見直しは月末の締めのついでにできます。
まとめ:今日からやること
- [ ] 直近3か月の給油・保険・整備・通信・有料道路の支払を集め、月額を出す
- [ ] 日報の走行距離で割り、1kmあたりの額を費目ごとに出す
- [ ] 有料道路の習慣区間と給油場所を、今日から変える
- [ ] 空車回送の距離を日報から出し、2割を超えていれば案件の組み替えを検討する
- [ ] 保険は削らず、補償の過不足を更新時に確認する
- [ ] 車検・タイヤ・点検を年間計画にして月額で積み立てる
手取りは、売上の数字ではなく、出ていく額を管理できているかで決まります。まず5つの費目を並べるところから始めてください。