「2028年から軽貨物も“許可制”になるらしい」「黒ナンバーの届出制が終わって、審査に通らないと開業できなくなるの?」——トラック新法(改正貨物自動車運送事業法)の話題が広がるなかで、こんな不安の声をよく聞くようになりました。今まで書類を出せば翌日から走れたのに、これからは審査待ちになるのか。既に開業している人は更新に落ちたりしないのか。気になるところです。
結論:今わかっている範囲では、軽貨物は「届出制」のまま
先に結論から言います。2026年8月時点で公表されている国土交通省の情報を見るかぎり、貨物軽自動車運送事業(軽貨物・黒ナンバー)を届出制から許可制へ変える、という制度改正は決まっていません。
よく混同されているのが、トラック新法で導入される「許可の5年更新制」です。これは、もともと許可制である一般貨物自動車運送事業(緑ナンバーの一般トラック)の許可を、5年ごとの更新制にするという話です。届出制の軽貨物を許可制に格上げするものではありません。
つまり「2028年に軽貨物が許可制になる」という理解は、一般貨物向けの改正が軽貨物の話として伝わってしまった可能性が高い、ということです。ただし——軽貨物には軽貨物で、別ルートの義務強化がすでに始まっています。 ここを整えておくことが、噂に振り回されないいちばんの備えになります。
届出制と許可制は、そもそも何が違う?
| 届出制(現在の軽貨物) | 許可制(一般トラック) | |
|---|---|---|
| 開始のしかた | 必要書類を提出(受理されれば事業開始) | 申請 → 審査 → 許可を受けてから開始 |
| 行政の関与 | 事後的なチェックが中心 | 事前審査で可否が判断される |
| 更新 | 更新の仕組みは基本なし | トラック新法で5年ごとの更新制へ |
軽貨物が「届出制」でいられるのは、事業のハードルを低く保つ制度設計だからです。この枠組み自体が変わったという公的な確定情報は、今のところ見当たりません。
トラック新法(適正化二法)で実際に決まったこと
2025年6月11日に公布された、いわゆる「トラック適正化二法」で、運送業界には次のような改正が入りました。
- 許可の5年更新制(一般貨物自動車運送事業の許可を5年ごとの更新に)
- 適正原価に関する規定(適正な運賃・料金の確保に向けた仕組み)
これらのうち更新制・適正原価の規定は、公布から3年以内に施行とされています。公布日が2025年6月11日なので、遅くとも2028年6月ごろまでに施行される見込みです。「2028年」という数字はここから来ています。ただし繰り返しになりますが、対象はもともと許可制の一般貨物です。施行時期や詳細な基準は施行令・省令の整備を待つ部分が残るため、最新の確定情報は国土交通省の一次情報で確認してください。
軽貨物に「今」かかってきている義務は、こちら
許可制よりも先に、軽貨物ドライバーが押さえるべきは2025年4月から始まった安全対策の強化です。重大事故の増加を受けて2024年に法令が改正され、届出制のままでも次のような義務が加わりました。
- 貨物軽自動車安全管理者の選任:営業所ごとに選任・届出が必要。一人で事業をしている人も対象です。
- 講習の受講:安全管理者は選任前の一定期間内に講習を受け、選任中も2年に1回の定期講習を受ける必要があります。
- 点呼の実施:業務前後の点呼を行い、点呼記録簿に残す運用が求められます。
- 業務記録の作成・保存:毎日の業務の開始・終了地点や走行距離などを記録し、1年間保存します(バイク便を除く)。事故が起きた場合の記録も必要です。
施行(2025年4月)より前から事業をしていた既存事業者には経過措置があります。安全管理者の選任は施行から2年(2027年3月末ごろ)まで猶予され、特定の運転者への特別指導・適性診断などは施行から3年の猶予が設けられています。一方、2025年4月7日以降に経営届出をした事業者には経過措置はなく、当初から対応が必要です。自分がいつまでに何を整えればよいかは、期限を取り違えないよう公的情報で確認しておきましょう。
実務メモ:記録は「散らばらせない」だけで強くなる
安全管理者・点呼・業務記録・事故記録と、軽貨物でも残すべき記録が着実に増えています。将来もし審査や更新のような仕組みが議論されたとしても、見られるのは結局「日々の記録がきちんと残っているか」です。
ポイントは、点呼記録・業務記録・売上や請求の記録をバラバラの紙やアプリに散らばらせないこと。日付でひもづけて一箇所にまとめておけば、行政への提出も、確定申告も、万一の事故対応も、あとから探し回らずに済みます。「今の義務を淡々とこなしている人」は、制度がどう動いても慌てずに済みます。
まとめ:今日からできるやることリスト
- [ ] 「軽貨物が許可制になる」という情報は、一般貨物の5年更新制と混同していないかを確認する
- [ ] 貨物軽自動車安全管理者を選任・届出しているか確認する(一人でも必要)
- [ ] 安全管理者の講習(定期講習は2年に1回)の受講状況を確認する
- [ ] 点呼と業務記録(1年保存)を毎日残す運用にする
- [ ] 既存事業者は経過措置の期限を公的情報で確認する
- [ ] 記録を日付でひもづけて一箇所にまとめる
制度は動いていますが、慌てて何かを買ったり手続きを急いだりする必要はありません。まずは今ある義務を正確に押さえること。それが2028年前後の動きに対する、いちばん堅実な備えです。
参考
- 国土交通省|改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html
- 国土交通省|貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html
- 国土交通省|トラック適正化二法について:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000019.html