「ヤマトも佐川も運賃を上げたってニュースで見た。元請けの取り分は増えてるはずなのに、うちの委託単価はずっと同じ——これっておかしくない?」。軽貨物の現場で働いていると、一度は引っかかる疑問だと思います。

結論から言うと、大手の運賃改定=あなたの単価も自動で上がる、ではありません。ただし、業界全体の「売値」と「人件費相場」が上がっているという事実は、あなたが単価の見直しを申し入れるときの、れっきとした根拠になります。この記事では、なぜ単価が据え置きになりがちなのかという仕組みと、公開情報を交渉材料に変える具体的な進め方を整理します。

先に結論:値上げは「連動」しない。だから自分から動く

なぜ「売値」が上がっても委託単価は据え置きになるのか

大手宅配各社は近年、運賃の改定を続けています。たとえばヤマト運輸は2025年10月1日から宅急便の届出運賃を改定(改定率は平均約3.5%)し、佐川急便も2024年4月に宅配便の届出運賃を改定しています。ニュースで「値上げ」と報じられるのは、この荷主向けの売値の部分です。

ここで押さえておきたいのは、元請けの売値と、あなたへの委託単価は、別々の契約で決まるということです。売値が上がっても、委託単価の改定を元請けが自動で行う義務があるわけではありません。だから「上流は値上げしたのに、自分の単価は前のまま」という状態が普通に起こります。

さらに、燃料費や車両維持費、社会保険料などの負担は運ぶ側であるあなたにものしかかっています。売値だけが上がって末端の単価が据え置きなら、コスト上昇分をあなたが一方的にかぶっている構図になりかねません。

「据え置き」を動かすための3つの材料

黙っていて単価が上がることは、まずありません。動かすには客観的な材料をそろえて申し入れるのが近道です。

  1. 市場相場の資料:大手の運賃改定リリースや、業界全体でコストが上がっているという公表情報は、「相場が動いている」ことを示す一次資料になります。感覚ではなく公開された数字で語れると、交渉のトーンが変わります。
  2. 自分のコスト増の記録:燃料代、車両の整備費、保険料などが「いつ・いくら」上がったかを、自分の帳簿から示せるようにしておく。相手が反論しにくい、あなた自身の実データです。
  3. 制度という後ろ盾:国は毎年9月・3月を「価格交渉促進月間」とし、労務費や燃料費などの価格転嫁を発注側に働きかけています。さらに2026年1月1日には、下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」へと改正・施行され、「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止されるなど、一方的な据え置きが問題視される方向が明確になっています。

この3つをそろえると、「値上げしてほしい」というお願いではなく、「相場もコストもこれだけ動いた、協議させてほしい」という根拠のある申し入れに変わります。

交渉テーブルへの載せ方(話法の例)

いきなり「単価を上げて」と切り出すより、事実→自分の状況→依頼、の順に置くと伝わりやすくなります。

ポイントは、個人の不満ではなく市場と制度の話にすること。価格転嫁は今や国全体で後押しされているテーマなので、「協議したい」という申し入れ自体が正当なものだと構えておいて大丈夫です。

日報・単価・コストを一本化しておくと交渉が早い

交渉で効くのは、記憶ではなく記録です。ところが単価交渉のたびに「燃料いくら上がったっけ」「去年の単価いくらだった」と探し回るのでは、話を切り出す前に力尽きてしまいます。

こうして単価・稼働・コストを一本化しておけば、「この1年で件数は増えたのに手取りは減っている」といった話を、その場で数字で示せます。交渉の説得力は、この足元のデータで決まります。

まとめ:やることリスト

なお、価格転嫁や取引適正化の制度は運用が更新されていきます。最新の正確な情報は中小企業庁・公正取引委員会等の公的情報で確認してください。

参考