「先月まで普通に走れていたのに、8月に入ったら急に配達件数が減った」——開業して最初の夏を迎えたドライバーが、決まってぶつかる不安です。しかも同じ時期に納税の通知が届き、「収入は減っているのに支払いは増える」谷がやってきます。
結論から言うと、8月の荷量減はあなただけの問題ではなく、業界に例年ある季節の波である可能性が高いです。パニックにならず、①自分の売上を「昨年同月比」で冷静に見る、②夏に重なる支払いを先に把握して現金を残す、③安売りスポットに飛びついて単価を崩さない——この3つで乗り切れます。順番に整理します。
なぜ8月は荷物が減るのか
軽貨物の現場では、2月と8月が荷量の落ちる閑散期だとよく言われます。7月の夏のセールやお中元の波が過ぎ、お盆で企業や個人の動きが止まるため、8月前半は宅配・企業配ともに件数が伸びにくい、というのが通例です。
ただし注意したいのは、「8月に何%落ちる」といった月別・季節別の落ち込みを示す公的な統計データが、はっきり公表されているわけではないことです。国が公表している宅配便の取扱実績は年度単位の集計が中心で、月ごとの増減は読み取れません。ですので本記事の「8月は減りやすい」は、あくまで業界で語られてきた経験則として受け止めてください。荷量の傾向は委託元・エリア・案件の種類によっても変わります。
大事なのは、世間の一般論ではなく自分の数字を見ることです。
不安の正体は「比べる相手が違う」こと
売上が減って不安になるとき、多くの人は先月(7月)と比べてしまいます。繁忙期の7月と閑散期の8月を比べれば、下がって当然です。ここで落ち込む必要はありません。
見るべきは次の2つです。
- 昨年の同じ月(前年同月比):去年の8月も同じくらい下がっていたなら、それは「季節の波」であって異常ではありません。開業1年目でまだ前年データがない人は、来年のために今年の月別売上を必ず残しておきましょう。
- 1年を通した波の形:毎月の売上を並べてグラフにすると、「2月と8月が谷、それ以外が山」という自分だけの季節パターンが見えてきます。パターンが分かれば、毎年の谷に事前に備えられます。
数字で「これは想定内」と分かるだけで、不安の大半は消えます。逆に、前年同月より明らかに大きく落ちているなら、委託元の荷量減や案件変更など、季節以外の原因を疑うサインになります。
8月は「収入減×支出増」の谷になりやすい
夏枯れがつらいのは、売上が落ちる時期に支払いが重なりやすいからです。個人事業主として、この時期に意識しておきたい代表的な支払いを挙げます。
- 所得税の予定納税(第1期分):前年の申告納税額が一定額以上あった人が対象で、その年の7月1日から7月31日までに第1期分を納めます(対象や金額は税務署からの通知で確認します)。7月末の納付が、8月の資金繰りに影を落とします。
- 個人事業税:都道府県が課す税金で、多くの地域で第1期の納期が8月に設定されています。ただし納期や対象は都道府県ごとに異なるため、お住まいの都道府県から届く納税通知書で必ず確認してください。
- 住民税・国民健康保険料・国民年金保険料など:これらも分割の納期が夏場に重なることがあります。
つまり8月は、入ってくるお金が細るのに、出ていくお金は増える構造になりがちです。だからこそ、夏枯れ対策は「営業を頑張る」より先に、現金をどう残すかが主役になります。
資金繰りの守り方
- 繁忙期(7月・12月など山の月)に稼いだ分の一部を、納税・閑散期用の別口座によけておく。売上の入金口座と生活費の口座を分けるだけでも管理が楽になります。
- 予定納税や個人事業税は金額があらかじめ通知される・予測できる支払いです。届いた通知書の金額と納期を、カレンダーに先に書き込んでおきましょう。
- どうしても納付が厳しいときは、放置せず早めに税務署・都道府県税事務所へ相談を。分割や猶予の制度がある場合があります。
安いスポットに飛びついて単価を崩さない
荷物が減ると、「何でもいいから件数を埋めたい」とマッチングアプリの単発スポットに手を伸ばしたくなります。ここが分かれ道です。
- 目先の空き時間を埋めるために極端に安い案件を続けると、自分の単価の相場観が下がり、閑散期が明けても低単価が基準になってしまうことがあります。
- 「暇だから」と受けた遠方・長時間の案件が、燃料代や拘束時間を差し引くとほとんど利益が残らないことも珍しくありません。受ける前に、1件あたり・1時間あたりの手残りをざっと計算するクセをつけましょう。
閑散期は、単価を崩して件数を追う時期というより、閑散期にも動く案件(定期便・企業配・保冷やクールなどの付加価値案件)を見直し、繁忙期に向けて足場を整える時期と捉えると、単価を守りながら次の山に備えられます。
記録を一本化すると「谷」が怖くなくなる
夏枯れへの一番の備えは、日々の売上と経費を、その都度ひとつにまとめて記録しておくことです。
- 案件ごとの売上を月単位で残しておけば、翌年に「前年同月比」で自分を客観的に見られます。
- 燃料代・駐車代・高速代などの経費も一緒に記録しておけば、閑散期の「手残り」がリアルタイムで見え、安いスポットを受けるべきか判断しやすくなります。
- 予定納税や個人事業税の納付予定も同じ場所にメモしておけば、「収入減×支出増」の谷を先読みできます。
日報・請求・記録がバラバラだと、不安なときほど自分の数字が分からず、判断を誤ります。記録を一本化しておくことが、そのまま夏枯れ対策になります。
まとめ:8月にやることリスト
- [ ] 売上は「先月比」ではなく前年同月比で見る(1年目の人は今年の月別売上を必ず残す)
- [ ] 予定納税(7/1〜7/31)・個人事業税(多くは8月/都道府県により異なる)など、夏に重なる支払いの金額と納期を通知書で確認しカレンダーに記入
- [ ] 繁忙期に稼いだ分の一部を納税・閑散期用の別口座によけておく
- [ ] 安いスポットに飛びつく前に、1件・1時間あたりの手残りを計算する
- [ ] 閑散期に強い案件(定期・企業配・付加価値案件)を見直し、次の繁忙期に備える
- [ ] 売上・経費・納税予定を一本化して記録し、来年の自分のために月別データを残す
夏枯れは「毎年来ると分かっていれば怖くない」波です。数字で備えて、静かにやり過ごしましょう。
なお、税額・納期・対象範囲は年や地域、個人の状況で変わります。最新の正確な情報は、税務署からの通知書やお住まいの都道府県税事務所、国税庁等の公的情報で必ず確認してください。
参考
- 国税庁「No.2040 予定納税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2040.htm
- 国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」 https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200042/noufu_kigen.htm