「A社は1個180円、B社は1個160円。当然A社の方がいいよね?」 「単価の高い案件に移ったのに、月の売上はむしろ減った」
個建て(1個いくら)の案件は、額面の単価が比べやすい分、額面だけで選んで失敗しやすい仕事です。結論から言うと、個建ての実質単価は「入金額 ÷ 実際に配った回数」ではなく「入金額 ÷ 拘束時間」で見るのが正解で、不在・持ち戻り・再配達・センターでの仕分け時間を入れると、額面の順位はよく入れ替わります。この記事では、その計算式と日報から数字を拾う手順をまとめます。
結論:額面単価 × 完了率 ÷ 1個あたり拘束時間で比べる
個建て案件の実質を見るには、次の3つを掛け合わせます。
| 要素 | 意味 | 日報から拾う数字 |
|---|---|---|
| 額面単価 | 契約書の「1個◯円」 | 契約書 |
| 完了率 | 持ち出した荷物のうち、配達完了として請求できた割合 | 持ち出し個数・完了個数・持ち戻り個数 |
| 1個あたり拘束時間 | 仕分け・積込・配達・持ち戻り処理を含む1日の拘束時間 ÷ 完了個数 | 出庫・帰庫時刻、センター到着時刻 |
これを1時間あたりに直すと、次の式になります。
1時間あたり売上 = 額面単価 × 1日の完了個数 ÷ 1日の拘束時間
一例として、2つの案件を比べてみます(数字はすべて説明用の例です)。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 額面単価 | 180円 | 160円 |
| 持ち出し個数/日 | 130個 | 120個 |
| 完了個数/日 | 110個(完了率 約85%) | 114個(完了率 95%) |
| 拘束時間/日(仕分け含む) | 11時間 | 9時間 |
| 1日の売上 | 19,800円 | 18,240円 |
| 1時間あたり売上 | 1,800円 | 2,027円 |
額面はA社が20円高いのに、時間あたりではB社が上回ります。差を生んでいるのは、A社の完了率の低さ(不在が多いエリア)と、センター仕分けに時間がかかることです。額面の差20円は、この2つの要素で簡単に逆転します。
手順1:日報に「持ち出し・完了・持ち戻り」の3つの個数を書く
計算の材料は日報にあります。個建て案件では、次の項目を毎日残します。
- 持ち出し個数(センターで積んだ数)
- 完了個数(配達完了として請求できる数)
- 持ち戻り個数(不在・受取拒否・住所不明などで戻した数)
- 再配達で完了した数(当日中の再訪問で完了したもの)
- センター到着時刻・出発時刻・帰庫時刻
宅配アプリや端末の履歴に数字は残りますが、月末に見返して集計するのは手間です。日報に1行書いておく方が、翌月の案件判断にすぐ使えます。運転日報自体は記録が求められている書類なので、義務の項目に「個数の内訳」を足すだけで済みます。
手順2:完了率の内訳から「案件の性質」を読む
完了率が低い原因は、大きく2つに分かれます。
- エリアの性質:単身世帯が多く日中不在が多い、オートロック物件が多い、置き配不可の荷主が多い
- 時間帯の性質:午前指定が集中して回りきれない、夕方指定が多く1件あたりの移動が長い
エリアの性質は自分の努力で変えにくく、時間帯の性質は配達順の組み方である程度改善できます。日報の持ち戻り理由を「不在」「置き配不可」「時間指定に間に合わず」の3種類くらいに分けておくと、その案件が「頑張れば伸びる案件」なのか「構造的に低い案件」なのかが分かります。
手順3:加算の有無を確認し、請求タイプを決める
個建て案件でも、契約書に次のような加算が書かれていることがあります。
- 持ち戻りや再配達の加算(1件◯円)
- 大型サイズ・重量物の加算
- 早朝・夜間の割増
- 繁忙期の単価アップ
加算が1つでもあれば、その案件は「シンプル(運賃のみ)」ではなく「運賃ベース+加算」として扱い、加算の根拠になる数字(持ち戻り件数など)を日報に残す必要があります。加算を取りこぼしていると、額面単価は同じでも実質単価が下がります。請求の3タイプの整理は別記事「軽貨物の請求は3タイプ」(公開後にリンク追加予定)で扱っています。
手順4:完了率を上げる余地があるなら、配達順を先に直す
完了率が「時間帯の性質」で下がっている案件は、配達順の組み方で改善できることがあります。額面単価の交渉より先に、ここを直す方が早く効きます。
- 午前指定を最初に固める:午前指定の荷物を地図上でまとめ、最短の順路で回りきってから、指定なしの荷物に移る。指定なしを途中に挟むと午前指定に間に合わず、持ち戻りが増える
- 不在が多い時間帯を避けて再訪する:単身世帯の多いエリアは日中の在宅率が低いので、1回目は指定荷物のついでに寄り、2回目を夕方指定の便とまとめる
- 置き配可否を事前に把握する:荷主の置き配ルールと物件のオートロック状況を日報の備考に残しておくと、翌週以降の持ち戻りが減る
- 持ち戻り処理の時間を計る:センターへ戻して返却処理をする時間が長い案件は、その時間も拘束時間に入れて評価する
これらを1か月試して完了率が上がらなければ、その案件は「構造的に低い案件」と判断し、額面単価の交渉か、案件の入れ替えを検討します。判断の材料は、改善前後の完了率の差です。感覚ではなく日報の数字で比べてください。
よくある失敗:額面が高い案件に移って売上が減る
- 額面だけで移籍する:単価20円アップに惹かれて移ったが、エリアの不在率が高く完了個数が減った。持ち戻りの処理時間も増え、時間あたりでは前の案件より低かった。
- 仕分け時間を見ていない:センターでの仕分け・積込に毎朝2時間かかる案件を、配達時間だけで評価していた。拘束時間で割り直すと大きく下がる。
- 繁忙期の数字で判断する:11〜12月の完了個数を基準に案件を選び、1〜2月に持ち出し個数が半減して売上が落ちた。判断は少なくとも3か月の平均で行う。
- 持ち戻り加算を請求していない:契約書に「持ち戻り1件50円」と書かれているのに、件数を記録しておらず請求していなかった。
実務メモ:判断に使う数字は「完了個数」と「拘束時間」の2つだけ
複雑に見えますが、案件比較に必要なのは、日報の「完了個数」と「出庫〜帰庫の時間」だけです。この2つを毎日残しておけば、月末に「1時間あたり売上」を案件ごとに出せます。荷主別の粗利(燃料費・高速代を引いた残り)まで見たいときは、別記事「軽貨物は荷主別に粗利を出す」(公開後にリンク追加予定)の手順に進んでください。
まとめ:今日からやること
- [ ] 日報に「持ち出し・完了・持ち戻り」の個数と、センター到着・出発・帰庫の時刻を書く
- [ ] 契約書を見て、持ち戻り・再配達・サイズ・時間帯の加算があるか確認する
- [ ] 今月の数字で「額面単価 × 完了個数 ÷ 拘束時間」を案件ごとに出す
- [ ] 持ち戻り理由を3種類に分け、改善できる案件かどうかを見る
- [ ] 案件を変える判断は、3か月分の平均で行う
「1個いくら」は入口の数字にすぎません。完了率と拘束時間まで見て初めて、その案件で本当にいくら稼げているかが分かります。