「支払日を1週間過ぎたのに振り込まれない。催促したら関係が悪くなりそうで言い出せない」 「連絡がつかなくなった荷主がいる。数十万円、あきらめるしかない?」

運賃の未入金は、軽貨物の個人事業主にとって資金繰りを直撃する問題です。結論から言うと、期日翌日に事実確認、1週間で書面催促、1か月で内容証明、それでも動かなければ支払督促か少額訴訟という段階を決めておけば、感情に左右されず淡々と進められます。この記事では、段階ごとにやることと、その時点で必要な証拠を整理します。

結論:回収は4段階。早く動くほど回収率は上がる

段階 目安 やること 残す証拠
1. 確認 期日の翌営業日 経理担当へ「入金が確認できない」と連絡 連絡した日時・相手・回答
2. 催促 期日から1週間 メールまたは書面で、請求書の再送と支払期限の再提示 送信記録・書面の控え
3. 内容証明 期日から1か月 内容証明郵便で支払を求め、遅延利息と法的手続の予告 郵便局の証明・配達証明
4. 法的手続 内容証明の期限後 支払督促または少額訴訟(60万円以下)、必要なら通常訴訟 契約書・請求書・日報・やり取りの記録一式

未入金は時間が経つほど回収が難しくなります。荷主側の資金繰り悪化や倒産が原因の場合、先に動いた債権者から回収していくためです。

段階1:期日の翌営業日に「事実確認」の連絡をする

最初の連絡は催促ではなく確認です。「◯月◯日にお支払期日の請求書について、本日時点で入金が確認できておりません。行き違いでしたら恐縮ですが、お振込状況をご確認いただけますか」という程度の文面で十分です。

この段階で分かる原因の多くは事務的なものです。

経理担当者の名前、連絡した日時、回答内容をメモに残します。電話で済ませた場合も、「先ほどお電話した件」として要点をメールで送っておくと記録になります。

段階2:1週間たっても入金がなければ書面で催促する

確認から1週間たっても入金がなく、明確な支払予定日の回答もない場合は、書面での催促に切り替えます。メールで構いませんが、次の要素を必ず入れます。

ここで法律の後ろ盾を意識します。2026年1月1日施行の中小受託取引適正化法(取適法)では、支払期日までに払わなかった委託者は、受領日から起算して60日を経過した日から支払日までの期間について年14.6%の遅延利息を払う義務があります(同法第6条の率を定める公正取引委員会規則)。ただし取適法が適用されるのは、委託者が資本金1千万円超または従業員300人超(運送の委託の場合)といった規模の場合です。小規模な荷主が相手なら、フリーランス法の60日以内払いの規定が根拠になります。60日ルールの読み方は軽貨物の報酬は60日以内払いが義務に——取適法の読み方で解説しています。

書面の中で「取適法・フリーランス法上の支払遅延に当たる可能性がある」と一文添えるだけで、荷主側の経理の優先順位が変わることがあります。

段階3:1か月で内容証明郵便を送る

期日から1か月を過ぎても入金も具体的な回答もない場合、内容証明郵便に切り替えます。内容証明は「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明する制度で、配達証明を付ければ相手が受け取った日も証明できます。

内容証明に書く内容は段階2の書面とほぼ同じですが、次を明確にします。

内容証明は法的な強制力があるわけではありませんが、「本気で回収に動いている」ことが伝わり、時効の完成を6か月猶予する「催告」の効果もあります(民法第150条)。

この段階で、公的な相談窓口も使えます。

これらの窓口へ相談したことを荷主に伝えるだけで支払われるケースもあります。

段階4:支払督促か少額訴訟で法的に回収する

内容証明の期限を過ぎても入金がなければ、裁判所の手続に進みます。個人事業主が使いやすいのは次の2つです。

支払督促は、簡易裁判所の書記官が相手に支払を命じる手続で、書類審査のみで裁判所に出向く必要がありません。相手が2週間以内に異議を出さなければ仮執行宣言を申し立てられ、強制執行が可能になります。相手が異議を出すと通常訴訟に移行します。申立先は原則として相手方(債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所です(民事訴訟法第383条)。

少額訴訟は、60万円以下の金銭請求(民事訴訟法第368条)について、原則1回の審理で判決が出る手続です。原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てますが、契約で管轄を定めていればそれに従います。同じ裁判所で使えるのは1人につき年10回までです。証拠は最初の期日までにすべて提出する必要があるため、契約書・請求書・運転日報・催促のやり取りを揃えておきます。

60万円を超える場合や相手が争う姿勢の場合は、通常訴訟になります。弁護士費用と回収見込みを比べて判断することになるので、上記の無料相談窓口で見通しを聞いてから決めるのが現実的です。

消滅時効:5年放置すると請求できなくなる

運賃の請求権は、権利を行使できることを知った時(支払期日)から5年で時効により消滅します(民法第166条第1項第1号)。「いつか払ってくれるだろう」と数年放置すると、法的に請求できなくなります。内容証明による催告で6か月延ばせますが、根本的には裁判上の請求などで時効を更新する必要があります。

実務メモ:回収の証拠は日々の記録がすべて

法的手続まで進んだとき、裁判所が見るのは「運送を実際に行ったか」「その対価がいくらか」の証拠です。具体的には次のものです。

このうち日報は、未入金が起きてから作ることができない唯一の証拠です。「請求の根拠」としての日報を毎日残しておくことが、結果的に最強の回収対策になります。日報の記録項目は軽貨物の運転日報、記録義務化とは?を参照してください。

まとめ:やることリスト

未入金は「言いにくい」と先延ばしにするほど回収が難しくなります。段階と期限を先に決めておき、機械的に進めるのがいちばんです。

参考