「委託元を通すと単価が下がる。荷主と直接契約できないの?」 「直請けにしたいけど、何から始めればいいか分からない」
委託元(元請け・配送会社)を通した仕事は、荷主が払う運賃から手数料を引いた額がドライバーの単価になります。結論から言うと、直請けは「今の荷主を引き抜く」ことではなく、「直接契約できる荷主を新しく見つけ、実績データで信用を作る」ことです。この記事では、直請けに向かう段取りと、その前に揃えるべき数字を整理します。
結論:直請けは3段階。まず「今の契約で何ができるか」を確認する
| 段階 | やること | 必要なもの |
|---|---|---|
| 1. 契約の確認 | 今の委託契約で、荷主との直接取引が制限されていないかを読む | 委託契約書 |
| 2. 実績データの整備 | 日報から、件数・稼働率・事故ゼロ・遅延ゼロの記録をまとめる | 運転日報、請求書の控え |
| 3. 直契約の荷主を作る | 委託元経由でない新しい荷主に、実績データを持って提案する | 見積書、実績の一覧、保険の証明 |
いきなり3に飛ぶと、契約違反や信用問題になりかねません。順番を守ることが結果的に近道です。
段階1:今の契約で「直接取引の禁止」があるかを読む
委託契約書には、契約期間中や終了後の一定期間、委託元の荷主と直接取引することを禁じる条項(競業避止や直接取引禁止の条項)が入っていることがあります。まずこれを確認します。
- 条項がある場合、今の荷主に直接営業をかけると契約違反になり、損害賠償の対象になり得ます
- 条項の期間(契約終了後1年など)と範囲(その荷主だけか、同業全般か)を読み、範囲外の荷主から始めます
- 条項の有効性は内容によって判断が分かれます。不明な点があれば、契約書を持って弁護士など専門家に相談してください
ここで大事なのは、「今の委託元の荷主を引き抜く」発想を捨てることです。直請けの対象は、委託元を通していない、まだ取引のない荷主です。委託元との関係を壊さずに、直契約の割合を少しずつ増やす方が、収入は安定します。
段階2:実績データを「荷主が見たい形」にまとめる
直契約を提案するとき、荷主が知りたいのは「この人に任せて大丈夫か」です。それを示すのは口頭の説明ではなく、日報から出した数字です。最低限、次の4つをまとめます。
- 稼働実績:直近6〜12か月の稼働日数と、1日あたりの平均配達件数・便数
- 稼働率:契約した稼働日のうち、実際に稼働した割合(体調不良や車両故障での欠勤がどれだけ少ないか)
- 事故・遅延の記録:事故ゼロ、納品遅延ゼロの期間。事故があった場合は件数と内容
- 対応できる業務の範囲:時間帯、エリア、附帯業務(仕分け・棚入れ・検品など)、冷蔵・冷凍の可否
これらは、日報を毎日つけていれば集計するだけで出せます。逆に、日報がないと「たぶん月に22日くらい」「事故はしていないはず」といった曖昧な説明しかできず、信用の裏付けになりません。日報の記録は法令上求められている書類であると同時に、営業の武器でもあります。
あわせて、次の書類を揃えておきます。
- 貨物軽自動車運送事業の届出(黒ナンバー)の控え
- 任意保険(対人・対物)と、荷物の賠償に対応する保険の証券の写し
- 運賃・料金の届出の控え(運賃表の根拠になります)
- 適格請求書発行事業者の登録番号(登録している場合)
荷主側が法人であれば、消費税の仕入税額控除の関係でインボイス登録の有無を確認されることがあります。登録していない場合の扱いは荷主によって異なるため、提案前に自分の立場を整理しておきます。
段階3:直契約の荷主を作る
直契約の荷主候補は、大きく次の3つから出てきます。
- 今の仕事で接点のある納品先:ただし委託元の荷主本人ではなく、納品先の「別の部署・別拠点」や、納品先で紹介される取引先など、契約上の制限に触れない範囲で
- 地域の事業者:近隣の小売店・工務店・製造業・クリニックなど、定期的に「小口の配送」が発生する事業者
- 紹介:協力会社や同業のドライバーからの紹介。自分が受けきれない案件を紹介し合う関係を作っておく
提案の形は、シンプルにします。
- 対応できる業務と時間帯
- 運賃の目安(運賃・料金の届出に沿った表。「運賃のみ」か「運賃+待機料・附帯業務料」かを明示)
- 実績データの一覧(1枚)
- 保険の証明
見積の段階で請求タイプ(シンプル/運賃ベース+加算/単独課金)を決めておくと、契約後の請求トラブルを防げます。請求の3タイプの整理は別記事「軽貨物の請求は3タイプ」(公開後にリンク追加予定)を参照してください。
直請けで増える責任と、必要な体制
直契約にすると単価は上がりますが、委託元が担っていた役割が自分に移ります。
- 代替要員の確保:自分が休む日に誰が運ぶか。協力してくれるドライバーや協力会社との関係が必要
- 請求・入金管理:月次で締めて請求し、入金を確認する事務が増える
- クレーム対応:破損・遅延の一次対応を自分で行う
- 契約書の作成:報酬・支払期日・附帯業務・キャンセル時の扱いなどを書面で交わす
とくに代替要員は、荷主から必ず聞かれる項目です。1人では「休めない契約」になりがちなので、直請けを増やす前に、協力し合えるドライバーを2〜3人見つけておくことをおすすめします。
よくある失敗
- 今の委託元の荷主に直接営業をかける:契約の直接取引禁止条項に触れ、委託元との契約も打ち切られた。
- 実績データがなく口頭で説明する:荷主に「稼働率は?事故は?」と聞かれ、答えられず信用を得られなかった。
- 単価だけ上げて、附帯業務の条件を決めない:直契約後に仕分けや検品を無償で求められ、委託元経由のときより時間あたりの収入が下がった。
- 1社の直請けに全稼働を寄せる:委託元の仕事をすべて切って直請け1社に集中し、その荷主の都合で契約が終わって収入がゼロになった。
実務メモ:直請けの割合は「3割から」
直請けは、いきなり全部を切り替えるものではありません。委託元経由の安定した仕事を残しつつ、直契約の割合を売上の3割程度から始め、実績が積み上がるにつれて増やしていくのが現実的です。日報で「委託元経由」と「直契約」を分けて記録しておくと、それぞれの時間あたり収入と粗利を比べられ、次にどちらを増やすかの判断がつきます。
まとめ:今日からやること
- [ ] 委託契約書を読み、直接取引の制限条項の有無・期間・範囲を確認する
- [ ] 日報から、稼働日数・平均件数・稼働率・事故ゼロ期間を集計し、1枚にまとめる
- [ ] 届出の控え・保険証券・運賃表・登録番号を揃える
- [ ] 契約上の制限に触れない範囲で、直契約の候補荷主を3つ書き出す
- [ ] 休むときに代わりに運んでくれるドライバーを2〜3人見つける
- [ ] 直請けは売上の3割程度から始め、日報で委託元経由と分けて記録する
直請けは単価を上げる手段であると同時に、責任と事務を引き受けることでもあります。実績データと体制を先に揃えてから動くと、単価だけでなく信用も一緒に積み上がります。