「配送の請負だけだと単価も頭打ち。空いた時間で移動販売でも始めて、収入源を増やせないか」——軽貨物で走っていると、こう考える人は少なくありません。そこで検索でよく出てくるのが「事業再構築補助金」。過疎地での移動販売に使えた、という話を見た方もいるでしょう。

ただ、ここで大事な結論を先に言います。

結論:「事業再構築補助金」は、もう新規で申請できない

コロナ禍の業態転換を支えた事業再構築補助金は、第13回(2025年3月26日締切)で新規募集が終了しています。ネット上に残っている「移動販売に使えた」という記事の多くは、この制度がまだ募集していた頃のものです。今から「事業再構築補助金を使おう」と考えても、新しく申し込む窓口はありません。

その役割を引き継いだのが 「中小企業新事業進出補助金」(新事業進出補助金)ですが、この制度も第4回(2026年6月19日締切)で公募を終了しました。現在は、新事業進出補助金とものづくり補助金を統合した 「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」 に移行しており、その第1回公募が2026年6月29日から始まっています。制度は動き続けているので、これから申請を考えるなら「今開いている後継の制度を見る」のが正しい入り口になります。

後継の「新事業進出補助金」とはどんな制度か

ざっくり言うと、既存の事業とは違う、新しい市場・高付加価値な事業に進出する設備投資などを応援する補助金です。配送一本でやってきた事業者が移動販売や別の商売に踏み出す、というのは、方向性としてはこの制度が想定する「新事業進出」に近い発想です。

現在募集中の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)」は、どの申請枠で出すかで上限額が大きく変わります。第1回公募要領で公表されている従業員数別の補助上限額は、次のとおりです(括弧内は賃上げ特例を満たした場合)。

革新的新製品・サービス開発枠(新製品・新サービスの開発が中心のとき)

新事業進出枠(新市場・高付加価値な新事業へ進出するとき)

金額や枠の細かな適用条件は変わり得るので、最終的には必ず最新の公募要領で確認してください。

補助率は中小企業の場合 原則2分の1(小規模事業者など一定の条件で3分の2)。原則2分の1なら、かかった対象経費の半分が上限の範囲で戻ってくるイメージです(残り半分は自己負担)。

ただし「誰でも・何でも通る」制度ではない

金額だけ見ると魅力的ですが、要件はそれなりに重めです。公表されている主な条件には次のようなものがあります。

要するに、「補助金で設備を入れて終わり」ではなく、その後きちんと売上・付加価値を伸ばし、従業員の待遇も上げていく計画が求められます。一人親方で従業員がいない場合や、計画の数字を作り込めない場合は、そもそも要件に合うかどうかから慎重に見る必要があります。

「軽貨物の移動販売」は対象になる?——ここは断言しない

いちばん気になるのは「自分の軽貨物+移動販売という組み合わせが、この補助金の対象になるのか」でしょう。ここは正直に書きます。公的資料で対象・対象外がはっきり読み取れなかったため、この記事では断言しません。

ポイントは、この制度が「既存事業と異なる新市場への進出」を支援するものだという点です。単に車両を1台増やす、燃料代を補助する、といった趣旨の制度ではありません。実際、第1回公募要領の補助対象経費は「機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、外注費、原材料費、広告宣伝・販売促進費」などが中心で、移動販売車そのものの購入費が対象経費に入るとは明記されていません(「運搬費」は輸送にかかる費用を指し、車両購入費とは別物です)。また「機械装置等を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わないもの」は対象外とされています。移動販売への進出が「新事業進出」として認められ、かつ何が補助対象経費になるかは計画の中身次第で、最新の公募要領と公式ページ(中小企業庁・中小機構)で必ず確認してください。

記録の一本化は、補助金申請でも効いてくる

補助金は「事業計画で付加価値や売上をどう伸ばすか」を数字で示す世界です。ここで効いてくるのが、日々の記録です。配送・移動販売それぞれの売上、経費、稼働時間がバラバラの紙やアプリに散らばっていると、計画書を作るときも、採択後の実績報告のときも、集計だけで消耗します。

日報・売上・経費・請求を一つの流れで記録しておくと、事業ごとの数字がすぐ出せて、計画づくりも報告もぐっと楽になります。多角化を本気で考えるなら、走り出す前から記録を整えておく価値は十分あります。

まとめ:まずやることリスト

参考