「事故を起こしても、運輸支局に報告するほどの大きな事故じゃなかったから、書類は何もいらないよね?」——そう思っていませんか。
実はここに、見落とされがちな落とし穴があります。国土交通省へ提出する「事故報告書」とは別に、軽貨物の事業者が自分の営業所(事務所)で作って保存しておく「事故の記録」があるのです。しかもこちらは、大きな事故だけでなく事故が起きたときに作成し、3年間とっておく必要があります。
「報告してないから記録もいらない」は誤解です。この記事では、混同されやすい3つの書類——毎日の運転日報、事故の記録、重大事故の報告——を役割ごとに切り分けて、何を・いつまで残せばいいのかを整理します。
結論:軽貨物の「事故まわりの書類」は3層で考える
まず全体像を先に示します。2025年4月以降、軽貨物(黒ナンバー)の事業者が押さえておくべき記録は、大きく次の3つに分かれます。
- 運転日報(業務の記録) … 毎日つける。1年間保存
- 事故の記録 … 事故が起きたときに作る。営業所で3年間保存
- 重大事故の報告 … 死傷者を生じた事故など一定規模以上の事故のとき、運輸支局等を通じて国土交通大臣へ提出する
ポイントは、2の「事故の記録」と3の「報告」は別物だということ。3は運輸支局に出す書類ですが、2は出さずに自分の手元で3年保存しておく社内の記録です。3に当たらない事故でも、2の記録は必要になり得ます。
なぜ「事故の記録」が義務になったのか
軽貨物の配送はここ数年で急増し、それにともなって安全対策の強化が求められてきました。国土交通省は、貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化する制度改正を行い、令和7年(2025年)4月から施行しています。
この制度改正で軽貨物の事業者に求められるようになった安全対策には、おおまかに次のようなものがあります。
- 貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講
- 業務前・業務後の点呼の実施と記録
- 毎日の業務記録(運転日報)の作成と1年間の保存
- 事故が発生した場合の記録の作成と、その記録の3年間の保存
- 死傷者を生じた事故など一定規模以上の事故についての、国土交通大臣への報告
このうち今回のテーマが、太字にした「事故の記録の作成・3年保存」です。事故が起きた事実を残し、なぜ起きたのかを振り返り、次に同じことを繰り返さないための材料にする——という趣旨のものです。
「事故の記録」には何を書くのか
国土交通省の制度改正の説明によると、事故が発生した場合に作成・保存する記録には、少なくとも次のような内容が含まれます。
- 事故の概要(いつ・どこで・どのような事故だったか)
- 事故の原因
- 再発防止対策(同じ事故を繰り返さないために何をするか)
「概要・原因・再発防止対策」の3点セットが軸になる、と覚えておくとよいでしょう。国土交通省は、この記録の様式例(書き方の見本)も公表しています。ゼロから自分で様式を考える必要はなく、まずはこの見本をベースに書き始めるのが確実です。
なお、記録すべき具体的な項目や、対象となる「事故」の細かな範囲は、国土交通省が示す様式例・関係規則で必ず確認してください。「どこまでの事故を記録に残すべきか」で迷ったら、記録しておくほうが安全側の判断です。
「事故報告書」(運輸支局への提出)との違い
ここが一番混乱しやすいところなので、あらためて整理します。
| 事故の記録(社内保存) | 重大事故の報告 | |
|---|---|---|
| 誰に出す? | 出さない(営業所で保管) | 運輸支局等を通じて国土交通大臣へ提出 |
| どんな事故が対象? | 事故が発生した場合 | 死傷者を生じた事故など一定規模以上の事故 |
| どうする? | 概要・原因・再発防止対策を記録して保存 | 所定の様式で報告 |
| 保存・提出の扱い | 3年間保存 | 定められた期限内に提出 |
言い換えると、「報告」は大きな事故のときに役所へ出すもの、「記録」は事故が起きたら自分の手元に残しておくものです。報告の対象にならない事故でも、事故の記録のほうは作成・保存の対象になり得る、という関係です。
なお、重大事故の報告には提出期限や速報の仕組みが定められています。対象となる事故の範囲・提出期限・速報の要否といった具体的な条件は、時期や事故の内容によって扱いが異なります。最新の正確な情報は、国土交通省・各運輸局等の公的情報で必ず確認してください。
よくある勘違い
- 「報告してない=記録もいらない」ではない 役所に報告するほどの事故でなくても、事故の記録は必要になり得ます。
- 「運転日報に書いたから事故の記録は不要」ではない 日報は毎日の業務の記録(1年保存)、事故の記録は事故が起きたときの記録(3年保存)で、目的も保存年数も違います。両方が必要です。
- 「3年経つ前に捨ててよい」ではない 保存年数の途中で処分してしまうと義務違反になり得ます。年数の管理も大切です。
記録・日報・請求を一本化するとラクになる
ここまで見てきたとおり、軽貨物の事業者が残すべき記録は「運転日報(1年)」「事故の記録(3年)」など、種類も保存年数もバラバラです。紙で管理すると、書き忘れ・紛失はもちろん、「これは1年、これは3年」という保存期限の管理まで自分でやることになり、地味に負担が重くなります。
そこで有効なのが、日報・点呼・事故の記録・請求などをデジタルでまとめて残すやり方です。事故が起きたときも、スマホから概要・原因・再発防止対策を入力しておけば、そのまま保存・検索でき、後から「あの事故の記録どこいった?」と探す手間がなくなります。電子データでの保存も認められる方向で整備が進んでいるため、紙にこだわらず一本化しておくと、保存年数の管理も含めて楽になります。KeibakoBill は、こうした軽貨物の業務記録の一本化をサポートするために作られています。
まとめ:今日からやることリスト
- [ ] 「運転日報(1年)」「事故の記録(3年)」「重大事故の報告」の3つの違いを頭に入れる
- [ ] 国土交通省が公表する事故の記録の様式例を入手し、見本として用意しておく
- [ ] 事故が起きたら、概要・原因・再発防止対策を記録する
- [ ] 事故の記録は営業所で3年間保存する(運転日報は1年)
- [ ] 死傷者を生じた事故など大きな事故のときは、運輸支局等を通じた報告も必要になることを覚えておく
- [ ] 記録が煩雑になってきたら、日報・事故の記録などのデジタル一本化を検討する
事故の記録は、起きてほしくないものを前提にした書類です。だからこそ後回しにされがちですが、いざというときに「きちんと振り返って対策した」という事実が、自分の事業を守る証拠にもなります。様式例に沿って、概要・原因・再発防止対策の3点を淡々と残す——それだけで十分です。
なお、施行日・記録項目・保存年数・報告の対象や期限といった具体的な要件は、今後変更される可能性があります。最新の正確な情報は、国土交通省・各運輸局等の公的情報で必ず確認してください。
参考
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業の安全対策を強化するための制度改正について(様式例)」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正を行いました」 https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000665.html