「線状降水帯で前が見えないのに、荷主からは『予定通り回って』と言われる」「台風が近づいているけど、自分の判断で休んでいいのか分からない」——軽貨物で一人で走っていると、危険な天候でも「運ぶか・運ばないか」をたった一人で決めなければなりません。会社員のように上司が止めてくれるわけでもなく、断れば次の仕事に響くのではと不安にもなります。
実は、こうした「運ばない判断」には国がつくった目安(よりどころ)があります。この記事では、国土交通省が定めた異常気象時の輸送に関する目安と、荷主への報告、そして危険なのに運送を強要されたときの通報窓口について、公的情報をもとに整理します。これから本格化する台風シーズンの前に、ぜひ押さえておいてください。
結論:危険なら「運ばない」を選んでいい。国も後押ししている
先に要点をまとめます。
- 国土交通省は2020年(令和2年)2月28日、台風等の異常気象時に輸送の安全を確保するための「目安」を定めました。
- この目安は、雨や風の強さに応じて「安全を確保する措置を講じる」「輸送を中止する」といった判断のよりどころになるものです。
- 気象情報などから輸送を中止すると決めた場合は、直ちに荷主等へ報告するという流れが示されています。
- 安全な輸送ができない状況なのに、荷主から輸送を強要された場合は、国交省に設けられた「意見募集窓口」等へ通報できるとされています。
- ただしこの目安はトラック運送事業者向けに示されたもので、軽貨物(黒ナンバー)への直接の適用範囲や、具体的な雨量・風速の数値は、最新の公的情報で確認が必要です。
つまり、「危険な天候で無理をしない」というドライバーの判断を、国が制度として後押ししている、という点がいちばんのポイントです。
なぜ国が「運ばない目安」を定めたのか
背景には、台風や大雨のなかで運行を続けた結果、横転事故などドライバーの命に関わる事態が起きてきたことがあります。危険だと分かっていても、荷主との関係や納期のプレッシャーから「運ばざるを得ない」状況に追い込まれてしまう——この構図を改善するために、国は2020年に輸送の目安を設定しました。
ねらいは大きく2つです。
- ドライバーが安全を理由に運行を見合わせやすくすること(判断のよりどころを示す)
- 危険な状況での運送の強要を防ぐこと(強要された場合の通報先を用意する)
「個人の根性や判断だけに任せない」ための仕組みだと考えると分かりやすいです。
目安の中身——雨・風の強さに応じた「措置」と「中止」
国交省の資料では、雨や風などの強さに応じて、車両に与える影響をふまえた段階的な措置の目安が示されています。大まかには、
- 一定の強さになったら安全を確保するための措置を講じる
- さらに危険な状況では輸送そのものを中止することを検討する
という考え方です。
⚠ ここで正直にお伝えします。この目安には、雨量(mm/h など)や風速(m/s)といった具体的な数値が別表として定められていますが、本記事の作成時点では一次資料からその数値を正確に読み取れませんでした。そのため、本文では具体的な数値の記載を避けています。自分の運行判断に使う場合は、必ず国土交通省の公式資料(後述の参考リンク)で最新かつ正確な数値を確認してください。 数字を曖昧なまま覚えてしまうと、かえって危険な判断につながります。
なお、この目安はもともとトラック運送事業者向けに示されたものです。軽貨物(貨物軽自動車運送事業)にそのまま同じ数値が適用されるかどうかも含め、自分の事業にどう関係するかは公的情報での確認をおすすめします。目安は「一律の法的義務」ではなく、安全な判断を助けるためのよりどころである、という位置づけも押さえておきましょう。
「中止する」と決めたら——荷主への報告がワンセット
目安で大切なのは、中止の判断を自分の胸のうちだけで完結させないことです。気象情報などから輸送を中止すると決めた場合は、直ちに荷主等へ報告するという流れが示されています。
報告を「ワンセット」にしておくメリットは大きいです。
- 連絡が早いほど、荷主側も代替手段や再配達の段取りを組みやすい
- 「いつ・どんな状況で・なぜ中止したか」を伝えておくことで、後からのトラブルを防げる
- 何より、自分が無断で休んだのではなく、安全のために正当な判断をしたという記録になる
ここで効いてくるのが、日々の業務記録です。中止を決めた時刻、その時の気象状況、荷主へ連絡した時刻と内容を残しておけば、それが「きちんと判断し、きちんと報告した」証跡になります。
危険なのに「運べ」と言われたら——通報窓口がある
もっとも切実なのが、安全な輸送ができない状況なのに、荷主から運送を強要されてしまうケースです。一人で仕事を請けている軽貨物ドライバーほど、関係が悪くなることを恐れて断りきれない場面があります。
このとき使えるのが、国土交通省に設けられた「意見募集窓口」等への通報です。危険な状況での運送を強要された場合には、そこへ通報できるとされています。「断ったら終わり」ではなく、おかしいと感じたら相談・通報できる受け皿が制度として用意されていることを知っておくだけでも、現場での心の支えになります。
ここでも、強要されたやり取りの記録(いつ・誰から・どう言われたか)が手元にあると、通報や相談のときに状況を正確に伝えられます。
実務メモ:判断と連絡を「記録」に残すとラク 大雨や台風での「運ばない判断」は、決めた瞬間だけでなく、その後の荷主連絡までがワンセットです。中止を決めた時刻・天候の状況・荷主へ連絡した内容を、その場でひとことでも残しておけば、後から「ちゃんと判断して、ちゃんと報告した」と説明できます。紙のメモだと散らばりがちですが、日々の運転日報や業務記録と一緒に残しておけば、判断と連絡の証跡が一本にまとまります。KeibakoBill のような業務記録の一本化は、こうした「いざという時の記録」を負担なく残すのに役立ちます。
まとめ:台風シーズン前にやることリスト
- [ ] 危険な天候では「運ばない」を選んでよい、と理解しておく
- [ ] 国交省が定めた輸送の目安の具体的な数値(雨量・風速)を公式資料で確認しておく
- [ ] 自分の事業(軽貨物)にこの目安がどう関係するかを公的情報で確認する
- [ ] 中止を決めたら直ちに荷主へ報告する流れを習慣にする
- [ ] 中止の時刻・天候・荷主への連絡内容を、その場で記録に残す
- [ ] 危険なのに運送を強要されたら、国交省の意見募集窓口等に通報できることを覚えておく
天候は自分の力ではどうにもなりません。だからこそ、無理をして事故を起こす前に、「運ばない」という判断を堂々と選べるよう、根拠と窓口を知っておきましょう。最新で正確な数値や窓口の情報は、必ず国土交通省等の公的情報で確認してください。
参考(公的一次ソース)
- 国土交通省/台風等による異常気象時下における輸送の目安を定めます(報道発表):https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000210.html
- 国土交通省/台風等の異常気象時下における輸送の目安の設定について(令和2年2月28日・自動車局貨物課):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001330342.pdf