「朝6時に『今日はなしで』と連絡が来て、その日の売上がゼロになった」 「荷物を取りに行ったら空だった。往復2時間、燃料代は自腹」
軽貨物の収入は、単価そのものより「単価が発生しない時間」で削られます。結論から言うと、キャンセル・空車回送・追加便・待機の4つは、単価交渉とは別に「条件」として契約に入れるものです。この記事では、4つの条件をどう決め、どう切り出し、どう根拠を残すかを整理します。
結論:収入が漏れる4つの場面と、契約に入れる条件
| 場面 | 何が起きるか | 契約に入れる条件の例 |
|---|---|---|
| 当日・前日キャンセル | 稼働を空けていたのに売上ゼロ | 前日◯時以降のキャンセルは運賃の◯割、当日は全額 など |
| 空車回送 | 集荷に行ったが荷物がない/納品先不在で持ち帰り | 空車でも回送分の運賃、または最低保証額 |
| 追加便・延長 | 予定外の便や時間延長を頼まれる | 追加1便あたりの単価、延長1時間あたりの料金 |
| 待機 | 積込・荷卸しで長時間待たされる | 待機◯分超過分に待機時間料 |
この4つは、荷主が「そのくらい融通してほしい」と思いやすく、ドライバーも「言いにくい」と感じやすい項目です。だからこそ、契約時に書面で決めておくことが、後の関係を守ります。数字は荷主・地域・案件で異なるため、上の表はあくまで「決めるべき項目の例」です。
条件1:キャンセル料は「いつから・いくら」を2段階で決める
キャンセル料の取り決めは、「いつからかかるか(時点)」と「いくらか(割合)」の2つを決めます。
- 時点の例:前日の17時以降、当日の朝6時以降 など、自分の稼働の準備(車両の手配・他の案件を断る判断)が始まる時刻を基準にする
- 割合の例:前日以降は運賃の一部、当日は全額 など
「キャンセルは無料」と決めていない案件は、実際には「キャンセル料は取れない」と同じです。契約書や委託条件通知書に記載がなければ、次の更新時に追加を依頼します。なお、荷主が定めた条件(キャンセルポリシー)がすでにある場合は、それを読んで、自分の稼働の実態と合っているかを確認します。
条件2:空車回送は「最低保証」で守る
集荷先に着いたら荷物がない、納品先が閉まっていて持ち帰る、といった空車回送は、時間と燃料を使って売上がゼロになる場面です。
- 「集荷に赴いた時点で運賃の◯割」「1回あたり最低◯円」といった最低保証の形で決める
- 荷主側の都合(出荷準備の遅れ、受け入れ側の不在)で発生した場合に限る旨を明示する
- 空車回送が月に何回発生しているかを日報に残し、頻度を交渉材料にする
条件3:追加便・延長は「単価表」を先に渡す
「今日もう1便お願いできる?」「あと1時間だけ延ばして」は、断りにくい依頼です。その場で単価を決めるのではなく、契約時に「追加1便あたり◯円」「延長1時間あたり◯円」の表を渡しておくと、依頼するときの荷主側の判断も早くなります。
追加便・延長の単価は、通常の便より高めに設定されることが一般的です。理由は、他の案件を断って対応すること、深夜や早朝に及ぶことが多いこと、事前の計画に入っていないことです。ここでも根拠になるのは、追加便を受けた回数・時刻・所要時間の日報記録です。
条件4:待機は「約款」を根拠に切り出す
待機時間料は、国土交通省の標準貨物軽自動車運送約款で運賃とは別の「料金」として定められており、交渉の根拠として最も使いやすい項目です。契約に「待機◯分を超えた分は◯円/30分」といった形で入れます。詳細は軽貨物の待機料・附帯業務料は請求できる|約款が定める料金の根拠にまとめています。
切り出し方:単価交渉と分けて、更新時に「条件表」として出す
条件の話は、単価の値上げ交渉と一緒にすると「値上げの上乗せ」に見えて通りにくくなります。分けて出すのがコツです。
- タイミング:契約更新時、または新規契約時。既存契約の途中で出すなら、キャンセルや空車が実際に発生した直後に「今後の取り決めとして」提案する
- 形:4つの条件を1枚の「条件表」にまとめ、「単価は現状のまま、発生した場合の扱いだけ決めたい」と伝える
- 根拠:日報から出した発生回数(今月キャンセル◯回、空車◯回、待機合計◯時間)を添える。数字がないと「たまにある程度」で終わる
荷主にとっても、条件が決まっていれば依頼のたびに気を遣う必要がなくなります。「お互いのルールを決めたい」という姿勢で出すと受け入れられやすくなります。
請求への反映:条件が付いたら「運賃ベース+加算」
キャンセル料・空車回送・追加便・待機料が契約に入った案件は、請求タイプが「シンプル(運賃のみ)」から「運賃ベース+加算」に変わります。請求書では運賃と加算の行を分け、加算の根拠(日付・件数・時間)を明細に書きます。加算の記録がないと請求できないので、条件を決めた日から日報の項目を増やしてください。請求タイプの整理は別記事「軽貨物の請求は3タイプ」(公開後にリンク追加予定)で扱っています。
よくある失敗
- 口約束で終わる:「キャンセルのときは考慮するよ」と言われて安心し、書面に残さなかった。実際に請求したら「そんな話はしていない」となった。
- 単価交渉と同時に出す:値上げと条件追加を同時に出し、両方とも保留にされた。
- 発生回数を記録していない:「月に何回くらい?」と聞かれて答えられず、条件の必要性を示せなかった。
- 条件を決めたのに請求していない:契約に待機料が入ったのに、日報に待機時間を書いておらず、結局請求できなかった。
実務メモ:条件は「守りの単価交渉」
単価を上げる交渉は荷主の予算に左右されますが、条件の取り決めは「発生したときだけ払う」ものなので、荷主側の負担感が小さく通りやすい傾向があります。単価が上がらなくても、条件が決まれば時間あたりの収入は確実に上がります。値上げ交渉の前に、まず条件表を作ることから始めてください。
まとめ:今日からやること
- [ ] 今の契約書で、キャンセル・空車回送・追加便・待機の取り決めがあるかを確認する
- [ ] 日報に、キャンセル・空車・追加便・待機の発生日時と時間を書く項目を追加する
- [ ] 1か月分の発生回数を集計し、4条件の「条件表」を1枚作る
- [ ] 契約更新時、または発生直後に、単価交渉とは分けて条件表を提案する
- [ ] 条件が決まったら、請求書の加算行と日報の記録項目を揃える
収入を守る条件は、単価より先に決めるものです。書面と日報の2つがあれば、言いにくい話も数字の話に変わります。