「月の売上は50万円を超えているのに、燃料代と高速代を引くと思ったより残らない」 「A社とB社、どっちが割に合っているのか、感覚でしか分からない」

軽貨物の売上は荷主ごとに単価も稼働時間も走る距離も違うのに、経費は「月にまとめていくら」でしか見ていない人が大半です。結論から言うと、荷主ごとに「粗利」と「1時間あたりの粗利」を出すと、忙しいのに残らない原因が案件単位で見えます。この記事では、特別なツールなしで運転日報から荷主別の粗利を出す手順と、その数字をどう使うかを整理します。

結論:見るのは「荷主別の粗利」と「時間あたり粗利」の2つ

指標 計算 分かること
荷主別粗利 その荷主の売上 −(燃料費+高速代+外注費+その他直接費) 案件そのものが黒字か
時間あたり粗利 荷主別粗利 ÷ その荷主に使った稼働時間 時間を使う価値があるか

売上が大きい荷主が、必ずしも時間あたりで見て良い荷主とは限りません。逆に売上は小さくても、近距離で待機が少なく、時間あたりでは最も効率のよい荷主が隠れていることがあります。

手順1:運転日報に「荷主」「時間」「距離」を必ず残す

荷主別に計算するには、日報が荷主ごとに分かれている必要があります。最低限、日報に次の項目を持たせます。

運転日報は2025年4月以降、軽貨物にも記録が求められている書類です。義務の項目については軽貨物の運転日報、記録義務化とは?にまとめていますが、義務の項目に「荷主名」と「区切り時刻」を足すだけで、粗利計算の材料が揃います。

同じ日に複数の荷主を回る場合は、厳密に分けられなくても構いません。「午前はA社3時間・60km、午後はB社4時間・40km」程度の粒度で十分です。

手順2:直接費を荷主ごとに配分する

経費のうち、荷主ごとに直接ひも付けられるものを「直接費」として配分します。

燃料費は、走行距離の比率で配分します。月の燃料費が6万円、月の総走行距離が3,000kmなら1kmあたり20円。A社に月800km走ったなら、A社の燃料費は1万6千円です。実際の給油額をそのまま使えばよく、燃費の計算は不要です。

高速代は、日報に区間と料金を書いていれば、そのまま荷主ごとに合計します。ETCの利用明細を荷主別に振り分けても同じです。

外注費は、その荷主の案件を他のドライバーに振った場合、払った金額をその荷主に付けます。

駐車場代・有料道路以外の実費も、どの荷主の配達で発生したかが分かれば直接費です。

車両のリース料・保険料・減価償却費、通信費、税理士報酬などは、荷主ごとに分けにくい「間接費」です。最初は間接費を配分せず、直接費だけで粗利を出します。間接費は月の合計で「全荷主の粗利の合計から引く」と考えれば足ります。

手順3:荷主別粗利と時間あたり粗利を計算する

数字が揃ったら、荷主ごとに表にします。

荷主 売上 燃料費 高速代 外注費 粗利 稼働時間 時間あたり粗利
A社(企業配送・日当) 220,000 16,000 12,000 0 192,000 176h 1,091円
B社(宅配・個建て) 180,000 9,000 0 0 171,000 120h 1,425円
C社(スポットチャーター) 90,000 8,000 15,000 30,000 37,000 40h 925円

この例は説明用の架空の数字ですが、構造はよくあるパターンです。売上ではA社が最大でも、時間あたりの粗利ではB社が上、C社は高速代と外注費で薄くなっています。感覚では「C社はスポットで単価が高い良い仕事」に見えていても、数字にすると時間あたりでは最も低い、ということが起きます。

手順4:数字を交渉と整理に使う

荷主別の数字が出たら、次の3つのアクションにつなげます。

1. 単価交渉の根拠にする 時間あたり粗利が低い荷主に対しては、「走行距離が長く燃料費と高速代がかさんでいる」「待機時間が長い」といった数字を持って交渉できます。燃料費の上昇分については運賃への転嫁を求める根拠が国の指針として示されています。交渉の進め方は燃料が上がったら運賃に乗せていい|軽貨物の転嫁交渉元請けの運賃は上がったのに委託単価が据え置きな理由|軽貨物の単価交渉を参照してください。

2. 請求漏れを見つける 粗利が薄い原因が「待機料や附帯業務料を請求していない」ことにあるケースは少なくありません。日報に待機時間が残っているのに請求書に加算がなければ、まずそこを直します。約款上の根拠は軽貨物の待機料・附帯業務料は請求できる|約款が定める料金の根拠にあります。

3. 案件の組み合わせを変える 時間あたり粗利が高い荷主の稼働を増やし、低い荷主を減らす、あるいは低い荷主は高速を使わない経路に変える、外注せず自分で走る日を作る、といった調整です。売上ではなく粗利で判断すると、「忙しくなったのに残らない」を避けられます。

数字を出すときの3つの注意点

  1. 1か月だけで判断しない:繁忙期と閑散期で荷主ごとの稼働は変わります。3か月ほど並べてから判断します。
  2. 売上の大きい荷主を簡単に切らない:時間あたりで低くても、稼働が安定している荷主は資金繰りの土台です。切るより先に交渉と請求漏れの確認をします。
  3. 自分の時給を上げることが目的ではない:時間あたり粗利は「どの案件に時間を使うか」の判断材料です。長時間働いて粗利を増やす方向に使うと、健康と安全を削ります。

実務メモ:日報→請求→粗利は同じ数字でつながる

荷主別粗利を出すために追加で必要な記録は、実はほとんどありません。日報の稼働時間・走行距離・高速区間は、加算請求の根拠として日々残すべき項目と同じです。請求書を作るときに荷主ごとに集計した売上と、日報から出た距離・時間を1つの表に並べれば、そのまま粗利の表になります。

「請求のための記録」と「経営を見るための記録」を別々に取ろうとすると続きません。日報1枚に寄せて、月に1回だけ表にする。それだけで、荷主ごとの判断ができるようになります。

まとめ:やることリスト

売上の数字だけでは「忙しいのに残らない」原因は見えません。荷主ごとの粗利を1度出してみると、次に何を交渉し、どの仕事に時間を使うかがはっきりします。